枕草子 野 分 の また の 日 こそ。 名著37 「枕草子」:100分 de 名著

『枕草子』の現代語訳:140

枕草子 野 分 の また の 日 こそ

野分=名詞、秋に吹く激しい風、台風 こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。 係り結び。 いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても あはれに=形容動詞「あはれなり」の連用形。 「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。 しみじみと思う、しみじみとした情趣がある。 をかしけれ=シク活用の形容詞「をかし」の已然形。 係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。 係り結び。 趣深い、趣がある、風情がある。 素晴らしい。 かわいらしい。 こっけいだ、おかしい。 カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。 台風の翌日はたいそうしみじみと趣深い。 立 たて 蔀 じとみ ・ 透 すい 垣 がい などの乱れ たるに、 前栽 せんざい どもいと 心苦しげなり。 立蔀(たてじとみ)=名詞、板戸 透垣(すいがい)=名詞、間を透かして作った板や竹の垣根 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 前栽(せんざい)=名詞、庭で木などを植えてある所、庭の植え込み 心苦しげなり=ナリ活用の形容動詞「心苦しげなり」の終止形、気の毒そうだ、痛々しい、つらそうだ 立蔀や透垣などが乱れている上に、庭の植え込みもとても痛々しい様子だ。 大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折ら れ たるが、 萩 はぎ ・ 女郎花 おみなえし などの上によころばひ伏せる、いと 思はずなり。 れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 思はずなり=ナリ活用の形容動詞「思はずなり」の終止形、意外である、思いがけない 大きな木々も倒れ、枝などの吹き折られたのが、萩や女郎花などの上に横たわり伏しているは、たいそう思いがけない。 格 こう 子 し の 壺 つぼ などに、木の葉を ことさらに し たら む やうに、 ことさらに=ナリ活用の形容動詞「殊更なり」の連用形、事を改めてするさま、わざわざ し=サ変動詞「す」の連用形、する たら=完了の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形 む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。 ㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。 婉曲とは遠回しな表現。 「~のような」と言った感じで訳したり、特に訳に反映させなかったりする。 やうに=比況の助動詞「やうなり」の連用形 格子のます目などに、木の葉をわざわざしたように、 こまごまと吹き入れ たる こそ、 荒かり つる風のしわざとは 覚え ね。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。 係り結び。 荒かり=ク活用の形容詞「荒し」の連用形 つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形 おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の未然形、自然に思われる、感じる、思われる。 「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれている。 ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形。 係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。 係り結び。 細かく吹き入れてあるのは、荒々しかった風の仕業とは思われない。 いと濃き衣 の 上曇 うわぐも り たるに、 黄 き 朽 くち 葉 ば の 織 おり 物 もの 、 薄 うす 物 もの などの 小 こ 袿 うちぎ 着て、 の=格助詞、用法は同格。 「で」に置き換えて訳すと良い。 本当だ。 清げなる=ナリ活用の形容動詞「清げなり」の連体形、さっぱりとして美しい、きちんとしている 寝(ね)=ナ行下二段動詞「寝(ぬ)」の未然形 られ=可能の助動詞「らる」の未然形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 誠実そうでさっぱりとして美しい人が、夜は風の騒ぎで寝られなかったので、 久しう寝起き たる ままに、 母 も 屋 や より 少し ゐざり出で たる、 たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 ままに=~するとすぐに。 ~にまかせて、思うままに。 (原因・理由)…なので。 「まま(名詞/に(格助詞)) より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや ゐざり出で=ダ行下二段動詞「居ざり出づ」の連用形、膝をついたままにじり出る。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 長く朝寝して起きてすぐに、母屋から少し膝をついたままにじり出ている状態で、 髪は風に吹き迷はさ れて、少しうちふくだみ たるが、肩にかかれ るほど、まことに めでたし。 れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形 めでたし=ク活用の形容詞「めでたし」の終止形、みごとだ、すばらしい。 魅力的だ、心惹かれる 髪は風に吹き乱されて、少しふくらんでいるのが、肩に掛かっている様子は、ほんとうにすばらしい。 ものあはれなる 気色に見いだして、「 むべ山風を」など言ひ たるも、 ものあはれなる=ナリ活用の形容動詞「ものあはれなり」の連体形。 なんとなくしみじみと感じる。 「もの」は接頭語であり「なんとなく」といった漠然とした様子を表す意味を持つ。 あはれなり=ナリ活用の形容動詞。 「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。 しみじみと思う、しみじみとした情趣がある 気色(けしき)=名詞、様子、状態。 ありさま、態度、そぶり むべ=副詞、なるほど、どうりで、もっとも たる=存続の助動詞「たり」の連体形 なんとなくしみじみとした様子で外を見て、「むべ山風を(=なるほど山風を嵐というのだろう。 )」などと言っているのも、 心 あら むと 見ゆるに、十七八ばかり やあら む、 「心(名詞)/あら(ラ変動詞の未然形)」 心あり=趣や風情がある。 思いやりがある。 物の道理が分かる。 情趣を解する。 思うところがある。 む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。 ㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 見ゆる=ヤ行下二動詞「見ゆ」の連体形、見える、分かる。 「ゆ」には「受身・自発・可能」の意味が含まれていたり、「見ゆ」には多くの意味がある。 や=疑問の係助詞、結びは連体形となる。 係り結び。 む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。 係助詞「や」を受けて連体形となっている。 係り結び。 文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 情趣を理解するのであろうと思われるが、十七、八歳ぐらいであろうか、 小さうはあら ね ど、 わざと大人とは見え ぬが、 ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形 ど=逆接の接続助詞、結びは已然形となる。 わざと=副詞、わざわざ、格別に、特別に。 正式に、本格的に特に、特別に ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形 小さくはないけれど、特に大人とは見えない人が、 生絹 すずし の 単 ひとえ の いみじう ほころび絶え、はなも かへり、濡れなどし たる、薄色の 宿直物 とのいもの を着て、 いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても ほころび=バ行上二動詞「綻ぶ(ほころぶ)」の連用形、縫い目がとける、ほつれる かへり=ラ行四段動詞「かへる」の連用形、色あせる たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 生絹の 単衣 ひとえ がひどくほころび(縫い目の糸が)切れ、はなだ色も色あせて、ぬれなどしている(その上に)、薄色の夜着を着て、 髪、 色に、こまごまと うるはしう、末も尾花の やうにて、 丈 たけ ばかり なり けれ ば、 色に=ナリ活用の形容動詞「色なり」の連用形、色つやが美しい。 風流だ、色好みだ。 うるはしう=シク活用の形容詞「うるはし」の連用形が音便化したもの、整って美しい、端正である。 きちんとしている。 仲が良い、親しい。 髪は、つややかで美しく、細かくきちんと整い、毛先もすすきようにふっさりしていて、背丈ぐらい(の髪の長さ)だったので、 衣 きぬ の 裾 すそ に隠れて、 袴 はかま のそば より見ゆるに、 より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや 着物の裾に隠れて、袴の所々から(髪の毛が)見えるが、 童 わらわべ 、若き人々の、根ごめに吹き折ら れ たる、ここかしこに取り集め、起こし立てなどするを、 れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 (その人が)童女や、若い人たちが、根こそぎ吹き折られたのを、あちこちに取り集めたり、起こし立てたりするのを、 うらやましげに押し張りて、 簾 す に 添 そ ひ たる 後 うし ろ 手 で も をかし。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 をかし=シク活用の形容詞「をかし」の終止形。 趣深い、趣がある、風情がある。 素晴らしい。 かわいらしい。 こっけいだ、おかしい。 カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。 うらやましそうに(簾を外に)押し出して、その簾に寄り添って(外を見て)いる後ろ姿も趣深い。

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2分で読む枕草子/現代語訳/第38段「池は」

枕草子 野 分 の また の 日 こそ

「枕草子」 読書の秋、10月は古文の授業で必ず登場する清少納言の「枕草子」を取り上げます。 優れた人間観察や風景描写が散りばめられた随筆ですが、習ったのは受験に役立つ文法が中心で、内容については深く知らない人がほとんどではないでしょうか。 そこで今回は、その本当の面白さを伝えられたらと思っています。 一条天皇の中宮・定子に仕え、才女として知られる清少納言ですが、「枕草子」には教条的な部分がまったくありません。 そこで語られているのは、男と女の性愛やすれ違い、人間関係のありがたさや難しさ、庭先でふと見つけた自然美など、日常の中の出来事と人間の正直な本音です。 本音だからこそ、時代を超えた普遍性と説得力があります。 それが大きな魅力となっています。 もう一つの特徴は、清少納言の観察力の鋭さと明るさです。 清少納言は才女でしたが、「法師はイケメンがいい」と言いきるミーハーなタイプでした。 また容姿にコンプレックスを持ち、家柄も誇れるものではなかったのですが、機転がきくため宮中の男たちにもてました。 頭でっかちであれば、人の心を描けません。 地位も美貌も兼ね備えた女性であれば、世の中を客観的に見つめることができなかったかもしれませんね。 彼女の生い立ちと性格が、「枕草子」を名作にしたのです。 番組では、清少納言の人生や当時の貴族社会を解説しながら、現代にも通じる「枕草子」のメッセージをひもといていきます。 視覚、聴覚、嗅覚をフルに使って世の中を切り取った。 視覚の面では遠近感のある描写が得意だ。 最も有名なのが「春はあけぼの」で始まる文章である。 春の早朝、横雲がたなびく中、空が次第に白くなっていく様子を描いたものだが、こうした散文による風景描写を日本文学に持ち込んだのは清少納言が初めで、「源氏物語」にもその影響が見られる。 第1回では、清少納言が切り取った一瞬の情景を楽しむと共に、「枕草子」が生まれた背景に迫る。 男は夜になると女のもとに忍んでやってくる。 宮中の女房のもとにも男が来ていた。 「枕草子」にはそうした会話を盗み聞きしている様子が描かれている。 清少納言が出会った男も数多く登場する。 共に夜を過ごした翌朝、気が利いた優しい手紙をくれる男。 房事が済むと、音を立てて慌ただしく帰り支度を始める無粋な男などだ。 いい男は持ち上げられ、悪い男は気の毒なほどに切り捨てられているが、清少納言の純情さも随所に見受けられ、その乙女心がほほえましい。 第2回では、清少納言が鋭く描き出した男女それぞれの魅力や、今も昔も変わらぬ男女の愛の機微を楽しむ。 清少納言は、何をすれば信頼を得られるかを的確に把握していた。 そのため「枕草子」は優れたマナー集として読むことが出来る。 また平安時代版・キャリアウーマンだったため、理想的な上司と部下の関係や、プロ意識をもつことの大切さなどついても事細かに記されている。 第3回では、「枕草子」を現代に通じるマナー集として読み解く。 そしてもう一つは時代背景だ。 当時清少納言が仕えていた定子は、実家が権力闘争に敗れたため、孤立を深めていた。 そのため清少納言は、定子を元気づけようと、厳しい現実には目をつぶり、輝かしい日々だけを記したのだ。 第4回では、当時の状況をおさえながら、清少納言が優れたエッセイストたりえたのはなぜかに迫る 「枕草子」こぼれ話 清少納言「枕草子」いかがでしたか? 「『枕草子』といえば『春はあけぼの』の段を暗記させられた記憶しかない」と、伊集院光さんも番組でいっていましたが、プロデューサーAも全く同じ。 300段以上もあるなんてことも知らなかったですし、「春はあけぼの」以外の段にこんなにも面白い話が満載だったことも恥ずかしながら知りませんでした。 さて、そんな魅力あふれる「枕草子」をどう料理するのか? なにしろ清少納言は、胸のうちに好奇心の奔流が渦を巻いているような人。 世の中のありとあらゆる素材を文章にしています。 テーマを四回にまとめ上げるなんてとてもできそうにありません。 ……とはいえ、「情景描写」「男女の機微」「マナーのよしあし」というテーマは初期の段階にほぼ固まりました。 しかし、もう一つがなかなか決まりません。 そこに救世主が現れました! 今回講師を担当してくださった山口仲美先生です。 「エッセイストの条件……なんてどうかしら?」と、開口一番にひとこと。 最初はどういう意味かわからず、「?」という感じだったのですが、打ち合わせをしていく中でだんだん考えがまとまっていきました。 これだけ多岐にわたって文才を発揮する清少納言のエッセイをひとくくりにすることは所詮無理。 むしろその多様性を「なぜこれほど豊かなエッセイを清少納言は書くことができたのか」という視点から切り取れば、枕草子の魅力が伝わるのではないか(これ、かなりプロデューサーAの強引な解釈が入っています。 先生、違ってたらごめんなさい)。 そう考えると、すーっと視界が開けてきました。 これが第四回「エッセイストの条件」誕生の舞台裏です。 もちろんその後も、どうやったら「エッセイストの条件」を魅力的に描けるか、ディレクターや山口先生とさまざまなやりとりをしながら、苦労して練り上げていきました。 個人的には、単に作品の中身を紹介するよりも、立体的に清少納言や枕草子のことがわかる仕掛けをつくることができたのではないかと考えています。 次回は、松下幸之助、吉川英治、田中角栄、川上哲治ら各界のリーダー達が座右の書にしたとされる処世訓の傑作「菜根譚(さいこんたん)」です。 逆境を乗り切る知恵が満載です。 お楽しみに!.

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『枕草子』の現代語訳:140

枕草子 野 分 の また の 日 こそ

野分=名詞、秋に吹く激しい風、台風 こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。 係り結び。 いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても あはれに=形容動詞「あはれなり」の連用形。 「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。 しみじみと思う、しみじみとした情趣がある。 をかしけれ=シク活用の形容詞「をかし」の已然形。 係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。 係り結び。 趣深い、趣がある、風情がある。 素晴らしい。 かわいらしい。 こっけいだ、おかしい。 カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。 台風の翌日はたいそうしみじみと趣深い。 立 たて 蔀 じとみ ・ 透 すい 垣 がい などの乱れ たるに、 前栽 せんざい どもいと 心苦しげなり。 立蔀(たてじとみ)=名詞、板戸 透垣(すいがい)=名詞、間を透かして作った板や竹の垣根 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 前栽(せんざい)=名詞、庭で木などを植えてある所、庭の植え込み 心苦しげなり=ナリ活用の形容動詞「心苦しげなり」の終止形、気の毒そうだ、痛々しい、つらそうだ 立蔀や透垣などが乱れている上に、庭の植え込みもとても痛々しい様子だ。 大きなる木どもも倒れ、枝など吹き折ら れ たるが、 萩 はぎ ・ 女郎花 おみなえし などの上によころばひ伏せる、いと 思はずなり。 れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 思はずなり=ナリ活用の形容動詞「思はずなり」の終止形、意外である、思いがけない 大きな木々も倒れ、枝などの吹き折られたのが、萩や女郎花などの上に横たわり伏しているは、たいそう思いがけない。 格 こう 子 し の 壺 つぼ などに、木の葉を ことさらに し たら む やうに、 ことさらに=ナリ活用の形容動詞「殊更なり」の連用形、事を改めてするさま、わざわざ し=サ変動詞「す」の連用形、する たら=完了の助動詞「たり」の未然形、接続は連用形 む=婉曲の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。 ㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文中に来ると「㋕仮定・㋓婉曲」のどれかである。 婉曲とは遠回しな表現。 「~のような」と言った感じで訳したり、特に訳に反映させなかったりする。 やうに=比況の助動詞「やうなり」の連用形 格子のます目などに、木の葉をわざわざしたように、 こまごまと吹き入れ たる こそ、 荒かり つる風のしわざとは 覚え ね。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 こそ=強調の係助詞、結びは已然形となる。 係り結び。 荒かり=ク活用の形容詞「荒し」の連用形 つる=完了の助動詞「つ」の連体形、接続は連用形 おぼえ=ヤ行下二段動詞「思ゆ・覚ゆ(おぼゆ)」の未然形、自然に思われる、感じる、思われる。 「ゆ」には受身・自発・可能の意味が含まれている。 ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形。 係助詞「こそ」を受けて已然形となっている。 係り結び。 細かく吹き入れてあるのは、荒々しかった風の仕業とは思われない。 いと濃き衣 の 上曇 うわぐも り たるに、 黄 き 朽 くち 葉 ば の 織 おり 物 もの 、 薄 うす 物 もの などの 小 こ 袿 うちぎ 着て、 の=格助詞、用法は同格。 「で」に置き換えて訳すと良い。 本当だ。 清げなる=ナリ活用の形容動詞「清げなり」の連体形、さっぱりとして美しい、きちんとしている 寝(ね)=ナ行下二段動詞「寝(ぬ)」の未然形 られ=可能の助動詞「らる」の未然形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 誠実そうでさっぱりとして美しい人が、夜は風の騒ぎで寝られなかったので、 久しう寝起き たる ままに、 母 も 屋 や より 少し ゐざり出で たる、 たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 ままに=~するとすぐに。 ~にまかせて、思うままに。 (原因・理由)…なので。 「まま(名詞/に(格助詞)) より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや ゐざり出で=ダ行下二段動詞「居ざり出づ」の連用形、膝をついたままにじり出る。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 長く朝寝して起きてすぐに、母屋から少し膝をついたままにじり出ている状態で、 髪は風に吹き迷はさ れて、少しうちふくだみ たるが、肩にかかれ るほど、まことに めでたし。 れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 る=存続の助動詞「り」の連体形、接続はサ変なら未然形・四段なら已然形 めでたし=ク活用の形容詞「めでたし」の終止形、みごとだ、すばらしい。 魅力的だ、心惹かれる 髪は風に吹き乱されて、少しふくらんでいるのが、肩に掛かっている様子は、ほんとうにすばらしい。 ものあはれなる 気色に見いだして、「 むべ山風を」など言ひ たるも、 ものあはれなる=ナリ活用の形容動詞「ものあはれなり」の連体形。 なんとなくしみじみと感じる。 「もの」は接頭語であり「なんとなく」といった漠然とした様子を表す意味を持つ。 あはれなり=ナリ活用の形容動詞。 「あはれ」はもともと感動したときに口に出す感動詞であり、心が動かされるという意味を持つ。 しみじみと思う、しみじみとした情趣がある 気色(けしき)=名詞、様子、状態。 ありさま、態度、そぶり むべ=副詞、なるほど、どうりで、もっとも たる=存続の助動詞「たり」の連体形 なんとなくしみじみとした様子で外を見て、「むべ山風を(=なるほど山風を嵐というのだろう。 )」などと言っているのも、 心 あら むと 見ゆるに、十七八ばかり やあら む、 「心(名詞)/あら(ラ変動詞の未然形)」 心あり=趣や風情がある。 思いやりがある。 物の道理が分かる。 情趣を解する。 思うところがある。 む=推量の助動詞「む」の終止形、接続は未然形。 ㋜推量・㋑意志・㋕勧誘・㋕仮定・㋓婉曲の五つの意味があるが、文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 見ゆる=ヤ行下二動詞「見ゆ」の連体形、見える、分かる。 「ゆ」には「受身・自発・可能」の意味が含まれていたり、「見ゆ」には多くの意味がある。 や=疑問の係助詞、結びは連体形となる。 係り結び。 む=推量の助動詞「む」の連体形、接続は未然形。 係助詞「や」を受けて連体形となっている。 係り結び。 文末に来ると「㋜推量・㋑意志・㋕勧誘」のどれかである。 情趣を理解するのであろうと思われるが、十七、八歳ぐらいであろうか、 小さうはあら ね ど、 わざと大人とは見え ぬが、 ね=打消の助動詞「ず」の已然形、接続は未然形 ど=逆接の接続助詞、結びは已然形となる。 わざと=副詞、わざわざ、格別に、特別に。 正式に、本格的に特に、特別に ぬ=打消の助動詞「ず」の連体形、接続は未然形 小さくはないけれど、特に大人とは見えない人が、 生絹 すずし の 単 ひとえ の いみじう ほころび絶え、はなも かへり、濡れなどし たる、薄色の 宿直物 とのいもの を着て、 いみじう=シク活用の形容詞「いみじ」の連用形が音便化したもの、(いい意味でも悪い意味でも)程度がひどい、甚だしい、とても ほころび=バ行上二動詞「綻ぶ(ほころぶ)」の連用形、縫い目がとける、ほつれる かへり=ラ行四段動詞「かへる」の連用形、色あせる たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 生絹の 単衣 ひとえ がひどくほころび(縫い目の糸が)切れ、はなだ色も色あせて、ぬれなどしている(その上に)、薄色の夜着を着て、 髪、 色に、こまごまと うるはしう、末も尾花の やうにて、 丈 たけ ばかり なり けれ ば、 色に=ナリ活用の形容動詞「色なり」の連用形、色つやが美しい。 風流だ、色好みだ。 うるはしう=シク活用の形容詞「うるはし」の連用形が音便化したもの、整って美しい、端正である。 きちんとしている。 仲が良い、親しい。 髪は、つややかで美しく、細かくきちんと整い、毛先もすすきようにふっさりしていて、背丈ぐらい(の髪の長さ)だったので、 衣 きぬ の 裾 すそ に隠れて、 袴 はかま のそば より見ゆるに、 より=格助詞、(起点)~から、(手段・用法)~で、(経過点)~を通って、(即時:直前に連体形がきて)~するやいなや 着物の裾に隠れて、袴の所々から(髪の毛が)見えるが、 童 わらわべ 、若き人々の、根ごめに吹き折ら れ たる、ここかしこに取り集め、起こし立てなどするを、 れ=受身の助動詞「る」の連用形、接続は未然形。 「る・らる」には「受身・尊敬・自発・可能」の四つの意味があるがここは文脈判断。 たる=完了の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 (その人が)童女や、若い人たちが、根こそぎ吹き折られたのを、あちこちに取り集めたり、起こし立てたりするのを、 うらやましげに押し張りて、 簾 す に 添 そ ひ たる 後 うし ろ 手 で も をかし。 たる=存続の助動詞「たり」の連体形、接続は連用形 をかし=シク活用の形容詞「をかし」の終止形。 趣深い、趣がある、風情がある。 素晴らしい。 かわいらしい。 こっけいだ、おかしい。 カ行四段動詞「招く(をく)」が形容詞化したもので「招き寄せたい」という意味が元になっている。 うらやましそうに(簾を外に)押し出して、その簾に寄り添って(外を見て)いる後ろ姿も趣深い。

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